TIFA Discovery of the year 受賞記念インタビュー

※こちらはTIFA2017(Tokyo Foto Awards) Discovery of the year の受賞者としてインタビューされた記事の日本語訳になります。

原文はこちら
先ごろのブログと合わせて読んでいただくと面白いかもしれません。

1.受賞作「The City of Juncture」には「人間」が描写されてないけど、建築写真には「人」は排除されるべき対象だと思うかい? それはなぜだい?

一般的に人物が入ることで見る者の注目が建築ではなく人にいってしまうことはたしかだ。それは避けた方が良い。そのことによってテーマがぼやけてしまうからね。建築写真に人間が映り込む場合、それはたいていの場合それがただの歩行者の場合が多い。それらは長時間露光、もしくは複数写真で避けることができるからね。でも時には人間を写すこむことでそこにドラマを演出することもできる。ぼくもたまに人を素材として入れることもあるしね。だから絶対に排除しなければいけないとは思はない。

2.建築写真を撮影する手順を話してくれるかい? 事前にリサーチはするかい?

リサーチはするよ。特にどの時間帯にどの方向から光がくるか。良い写真は良い光だよ。それはすべてのジャンルの写真にいえることだね。あとこれまでに撮られたその場所の写真も事前に見ておく。それは真似るためではなく、これまでに撮られた構図を避けるためなんだ。人気のある建築はどうしても似た構図になりがちだ。でも常に自分の視点を加えることは大事だよ。ただ安易に誰かの構図を真似たくないんだ。それは想像力を放棄している行為だよ。
でもこれまでの経験上、どんな事前学習も現場でのひらめきに勝るものはないね。早めに撮影地に行って周りを良く観察することだ。ネットは便利だけど、あまり頼らない方がいい。

3.建築写真撮影に必要な技術と機材はなんだと考えるかい?

まずは、建築が面白いと思えるかどうかかな。
休日にわざわざ街中や、橋の下に出向くんだからね。山の中を歩いて気分がリフレッシュされるわけではないし。ランドスケープと違い空気だってあまりよくない場所の方が多いしね。僕は良く排気ガスを吸いたくないからマスクをしているよ。あとは忍耐力。特に長時間露光は同じ場所で数時間過ごす事なんてよくあるからね。機材でいえばPCレンズはあった方が良いだろうね。最初のレンズが24mmがお勧めだ。建築と正対して垂直をきっちりだすのが基本だけど、建築を見上げて煽って撮っても面白い。僕の作品の90パーセントは24mmを使って撮影してるよ。あとは、より良いNDフィルターを使うことだね。絶対に安いフィルターを使っちゃだめだ。

4.撮影後のワークフローを教えてくれるかい? ポストプロセスが作品を占める割合はどれくらい?

ポストプロセスの定義にもよるんだろうけど何割とは言うのは難しいな。
ただ、ポストプロセスなしで自分の作品を作ることは考えられない。
撮影後、1つの作品を仕上げるのにかかるのはおおよそ1,2か月ぐらいかかると思う。純粋なポストプロセス、PHOTOSHOPを使ってのマスク処理やレーヤー処理にかける時間は多分50時間未満だと思う。それ以下の時もそれ以上の時もある。作品によっては撮影してから発表まで一年以上かかる場合もあるよ。妥協はしたくないんだ。

ポストプロセスにかける時間はひとそれぞれだと思うけど、ただ私がが考えるのに、説得力のある写真、もしくは作品を作るには完成までに多くの時間を費やすべきだと思う。PCの前に座っていない時間も重要なんだ。時間をおいて客観的になって自分の作品を見ることが大事だよ。

通勤の帰りに良いアイデアが浮かぶときもあるし。本を読んだり映画を見たりして良い着想を得ることもある。他の作品を作っていて、別の作品作りのアイデアを得ることもある。全てがつながっているんだ。撮影後、その晩に完成、ということはない。ブドウをつぶして、ワインがすぐできるわけではないだろう(笑)?良いワインは熟成するまでに時間がかかるだろう?じっくり時間をかけることが大切なんだ。「The City of Juncture」の最初の一枚を撮影をしたのは二年前だしね。最初は単作品だったけど、自分の表現したいことに説得性を持たせるにはシリーズの方が良いと考えたんだ。撮影と処理に二年近くかかったけど、その価値はあったと思う。

5.写真を始めたのはいつだい?

A: 5年前ぐらいかな。ちょっと仕事で行き詰っていてね。何か息抜きに新しいことを始めたかったんだ。
音大を出て、作曲家、そしてサウンドデザイナーとしてずーっと音に携わってきたんだ。それまで音を通して世界を見てきたんだけど、ビジュアルで表現する手法はすごく新鮮だった。どっぷりはまってしまって、まあ、結果的にそれが息抜きどころじゃなくなってしまったんだけどね。

6.建築写真以外でどんなジャンルに興味がある?

僕は最初「滝」ばかり撮ってたんだ。毎週末いろんな滝を撮影しに出かけた。水の流れを聞いていると心が落ち着くからかもしれない。今でもリフレッシュしたいとき、街中の喧騒を逃れたいときは、滝を撮影しに行くよ。

7.「写真」でどんな体験ができた?

「現実を受け入れる謙虚さ」と「根気強さ」を学んだよ。僕は撮影に同じ場所で数時間過ごす事はしょっちゅうなんだ。事前のリサーチをしっかりして、何時間もかけて撮影する。その結果がうまくいったときは最高だけど、実はうまくいかないことも多い。天候や、光の加減で作品の出来は大きく変わってしまうからね。コントロールできない要素は仕方ないんだ。

事前に考えていたような理想的な作品にはならないかもしれないけど、それはまた一つの結果なのは確かだしそれを受け入れるしかないんだ。それで満足すればそれでよいし、もし納得がいかなければまた撮影に行けばいいんだしね。良い写真を撮るにはひたすら続けていくしかないんだ。太陽は毎日昇って人生は続いていく。
それってまさに人生そのものじゃない?

8.あなたに影響を与えた写真家はいるかい?

Joel TjintjelaarJulia Anna Gospodarou には影響を受けたし多くを学んだよ。とはいっても本を読んだだけどね。彼らのワークショップは受けたことはないよ。彼らのモダンでハイコントラストなB&Wはとてもスタイリッシュでクールで、それまで見たどんなモノクロ写真とも違ったね。彼らの写真が、僕を建築写真の世界に傾倒するきっかけを作ったといえると思う。

9.叶うとしたらどんなプロジェクトをやってみたいかい?

三か月ぐらい休みを取ってゆっくりヨーロッパやアジアを回って様々な建築を撮影してまわりたいね。まさに夢だね!いったいいつになるやら(笑)

10.写真家の卵達にアドバイスをもらえるかい?

焦らないでじっくりやったらよいと思う。妥協はなしだ。「シェア」や「いいね」なんか気にしないで、作品を作るんだ他人の真似をするのは悪いと思はないよ。そこから多くを学べるからね。でもコピーするにしても、そこに一握りの「自分」のエッセンスを入れてほしい。そしてそのちょっとした違いを大事にしてほしいんだ。そのちょっとした違いを続けていくことによって、それが最終的に大きな違いとなって、「自分の写真」を構築する要素となると思うよ。

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